「(……………あぁ、やっぱ、)」
テーブルに肘をつき、本を読んで欠伸をする青いポケモンを見て思った。
「(綺麗だよなぁ……)」
海を創り出したと伝説で詠われるかいていポケモンカイオーガ。
それに対するたいりくポケモングラードンの俺、かつて争い(大喧嘩ともいう)をした俺たち2匹の中和に入った
てんくうポケモンレックウザ、DNAポケモンデオキシス、ねがいごとポケモンジラーチ、むげんポケモンラティオスとラティアス。
合計7匹は一応同じ一軒家に住んでいる。
二階建ての普通の家だ。
レックウザの体長7mはデオキシスの作った怪しげな機械で縮小する事ができるらしく、家の中には普通に入る事ができるらしい。
俺たちもそれを使っているわけだが…。
そんなこんなで一般人と変わらない毎日を送っている俺たちは、仕事も無く金欠状態だ。
今はデオキシスやラティオスがバイトやらパートやらでなんとか生活資金を稼いでくれている。
俺はたまに工事現場などで助っ人として働いたりして金を入れるが、大体は今の状態みたいに家でゴロゴロしている。
レックウザは家事全般担当、現在進行形で昼食の炒飯を作っているし、ラティアスは学校がある。
ジラーチやカイオーガは自分主義な為、絶対働こうとはしない。
レックウザは俺たち三匹にもっとしっかり働かんか、とか騒ぎ立てるが、カイオーガは聞く耳持たず。
もうすっかり諦めているようだが。
「……何を見ている」
「ぅお!!?」
ずっとカイオーガを見詰めたままモノローグしていたらしく、カイオーガが怪訝そうな目でこちらを見ていた。
突然だった為、俺は奇妙な叫び声を上げて座っていたソファから派手に転げ落ちる。
「阿呆か…変な奴だ」
「っうるせ……」
お前に見惚れていたから落ちた、なんて口が裂けても言えん。
打った頭をさすりながら、俺はよいしょと立ち上がる。
TVでも見るかと俺はテーブルの上にあったリモコンを取った。
適当にパッパとチャンネルを変えながらソファに座りなおす。
ふいに止まったバラエティ番組で、俺の好きな女性タレントがトークをしていたのが視界に入り、
俺は慌しく変えていたチャンネルを止めた。
TVから漏れる笑い声が不快だったのか、カイオーガはTVを見るなり眉間に皺を寄せる。
「うるさい」
「はぁ?」
「切れ」
言い草に腹が立った。
このまま引き下がっては後味が苦いので、俺はわざと音量を一気に上げてやる。
チッ、と小さく舌打ちが聞こえたが気にしない。
そのまましばらくTVに夢中になっていると、レックウザが炒飯を二つ運んできた。
テーブルにそれを置くと、レックウザは「今日は外食に行ってくる」と言って妙に嬉しそうな足取りで部屋を
後にしていく。
どうせギラティナとかなんとかっていう奴とデートだろう。
分かりやすい奴め。
TVはつけたまま、俺は炒飯にありつく。
向こう側のカイオーガもテーブルへ本を置き、同じように炒飯を食い始めた。
レックウザはデート、デオキシスとラティオスは仕事、ラティアスは学校、ジラーチは遊びに行っていない。
2匹だけだと静かだ―――――
「っうわ!!!」
「っっ!!?」
2匹きりという事実に今気付き、俺はいきなり奇声を上げる。
カイオーガがビクリと後ずさりしていたのにハッとなり、俺はすこずことまた座った。
「な、なんだいきなり」
「い、いや、その、すみません。なんでもないっす」
自分でなんだこの喋り方は、と思いながら誤魔化すようにコップの水を飲む。
「…レックウザは、」
「ん?」
「いいな。あんなに誰かに夢中になっているあいつなんて、初めて見たんだ。仲が続くといいが」
クスリと笑った。
あのカイオーガがいきなり笑うものだから、俺は驚いて口内にあった水でむせかける。
そんな事になる前に水を一気に胃へ流し込んだ。
「…お、お前はどうなんだ?」
「へ」
「だ、から。お前は、…想い人がいるのかと聞いているんだ」
――驚いた。
驚きすぎて口に含んでいた炒飯を一気に噴き出した。
「っ汚な!!!この、汚れただろう!!」
「テメェこそなんちゅー事質問すんだよ!!そういう質問には心の準備ってのがいるだろうがこのやろう!!!」
「ぐ…」
マジでビビった…。
そりゃあ好きな奴に好きな奴聞かれたら驚くぜ。
何考えてるかさっぱり分からん。
そもそもこいつは恋だの愛だの全然興味が無いはずだ。
突然そんな話題を出されたら平静なんて装えない。
てか好きなのはお前だなんて言うか。
「べつに…気にかかってもいいじゃないか…」
「っ!!」
しゅんと目を伏せて呟くカイオーガにまたもやビビり、俺は今度こそ本当にむせる。
さっきから様子がおかしいぞ、こいつ…。
いつもなら俺に話しかけてくる事すら少ないというのに。
こんな話題を振ってくるなんて、何か変なものでも食べたんじゃ…。
「カイオーガ…、大丈夫か?変だぞ今日」
「へっ、変じゃない!!!ただっ、…ただ、お前が前、工事現場でバイトしてるときに…っときに…
弁当を差し入れしていた♀ポケモンがいただろう!!それを受け取っていたから…
あれがお前の恋人なのではないのだろうかと、気になった、それだけだ!!」
最終的に立ち上がって力説したカイオーガは、息を切らして言葉を言い切る。
青色をした顔が僅かに赤く火照って見えたのは気のせいだろうか。
「…は、話が飲み込めねぇんだけど…」
「丁度一週間前だ!!あのレントラーの女のっっ」
カイオーガに言われた事を頼りに、俺は記憶の道を辿っていく。
――そういえば前、やたらと偉そうなレントラーの女が弁当を俺に渡してきた。
しかしあれは俺自身に渡したわけじゃなく、定期的にバイトに来ていた他の若い鳥ポケモンに渡す物だったのだ。
行くのがめんどくさいと、入り口付近で休憩していた(サボっていたともいう)俺に弁当を押し付けていった。
あぁそんな事もあったなぁ、と俺が思い出に和んでいると、目の前でカイオーガが眉間に皺を寄せる。
何が気に入らないのか分からん…。
「とにかくは、俺に恋人がいるのかどうかって話なんだよな…?俺はフリーだぜ」
「は……」
「あのレントラーは他の若いバイトに弁当を渡しにきたんだよ。入り口の近くにいた俺に渡してさっさと帰ったけどな」
とりあえずの事実を言うと、カイオーガは何故かホッとしたような顔をする。
………なんなんだ?
「そ、そうか……、ふん、もう30近い男がまだ女の1人もいないとはな。笑える話だ」
「っぬぁに!!?お前だって殆ど同じ状況じゃねぇか!!!」
「私はまだモテる方だ。お前はガサツな上に家事もできないし仕事もしないだろう」
「だからお前もそうだろって!!!」
バァンと机上を叩いて抗議するが、カイオーガは俺の反応を嘲笑うかのように鼻で軽く笑い、また炒飯を食べ始めた。
仕方なく俺も食事を再開するが、どうもすっきりしない。
「…なんだ、まだ言いたい事があるのか」
「い、いやべつに」
俺の視線に気付いたカイオーガが顔を上げ問い掛ける。
思わず誤魔化したが、正直さきほどのやり取りでのカイオーガの様子が気になっていたのが事実だ。
不完全燃焼な俺は、山盛りの炒飯を全て食べたのにも関わらず、まったく満腹にならなかった。
考え事に神経が持ってかれたせいで胃へ食べ物が通らなかったのか。
カイオーガはさっさと部屋を出、自室に戻っていってしまったが、俺はそのままの位置から動かずボーッと付いたままのTVを見詰めていた。
勿論見詰めているだけなので、内容などまったく頭に入らない。
最初の俺がTVを見たときの舌打ち、いきなりの恋愛関連の話題――
前者はいいとして、後者は明らかにおかしい。
いつものカイオーガならそんな話題絶対出さない。
「あー……なんかこんがらがってきた」
意味が分からない。
いつもあいつとは衝突して。
意見がかみ合わなくて。
――自分が好きになった訳が分からない。
そもそも一目惚れだったのだ。
♀だと勘違いしていて、後から♂だと分かってもずっと好きで。
ただ見た目がモロタイプだから今も惚れてるのではと思う。
「……ただいま…」
考え込んでいた俺の耳に、聞こえるはずのない声が飛び込んだ。
俺は慌てて起き上がり玄関に走り出す。
玄関には緑色の長い体を持つ竜、レックウザの姿が。
「れ、レックウザ!?デートはどうしたんだよ!!」
「でっデート、誰がデートだ!!!!……くっ……!!ギラティナが……留守だった……うぐおぉおぉ」
玄関で叫ぶなり今度はしゃがんで唸り始める。
うっとうしい奴だと思ったが、今はそんな事言う気になれない。
先ほどの事で何もする気になれなかった。
「っ…ところで、カイオーガと二人きりだったのだろう?発展はあったのか」
「っはあぁ!!?な、なんも無ぇよっっ何考えてんだこのボケっ!!!!」
思わず怒鳴った俺を、レックウザは鼻で笑う。
この野郎、馬鹿にしやがって。
「なんだ、仕向けたというのに」
「…は?」
「ジラーチに昼前には家を出ろと言い、我はシンオウに行き、貴様らを二人きりにさせようと仕向けた、と言っているのだ。意味が無かったようだな」
話の意味が飲み込めず、俺はしばらく放心状態になっていた。
そんな様子を見て、レックウザは口角を吊り上げ俺の横を通り過ぎる。
――すべてお見通し、そんな目をしてた。
「ぐっ……腹立つ、あいつ何様のつもりだ」
当たるものが無く、俺は仕方なく廊下で軽く地団駄を踏んだ。
くっつけたくてこんな計画を立てたようだが、そんな他人の事を気に掛ける暇があるなら自分の恋愛面を心配しろってんだ。
心の中で愚痴る。
「…やっぱり合わないのか…?」
あいつ、カイオーガとは相性が何かと悪いような気がする。
タイプ的な意味もあるが。
いやいや、問題は性格だ。
カイオーガだって黙っていれば女がいくらでも言い寄ってくるはずだ。
けど口を開けば次々と飛び出す罵声。
何度あいつにけなされた事か。
何度あいつにののしられた事か。
Sっ気が余計にあると思う。
けど、けど、けど。
「やっぱ好きだぁっ…」
自分の気持ちに嘘はつけない。
さきほどのおとしまえをつける為に、俺はあいつの自室がある二階へ続く階段に向かった。
今度こそ、言う。
自分の気持ちを。
すれちがわないように
[END]
あとがき
たいっっっっへんお待たせいたしました龍神さん!!!!
何ヶ月待たせてんだよこのボケィ…!!
しかもお粗末ですみません構成めちゃくちゃですみませんすみません
お持ち帰り可能ですどうぞ…っ
モドル