桃色day


「るっ、るっ、ルーウェインっっ!!!」

青の長い衣と三角帽子を纏い、仮面をつけたユークの男性に叫んだ青年。
その叫んだ彼の顔は朱色に染まっていた。

「ん?なんだ?」
「いやっ、その、話が…あって…」

ユークの男性――ルーウェインは読んでいた本を閉じ青年を向く。
青年は朱色だった顔を更に赤く染めてルーウェインをまっすぐ見た。

「俺っ、初めて会ったときから……っ。お、ルーウェインの事が…っ」
「…?」



「――――~~っっ!!!!やっぱ無理だあぁぁぁああぁっ!!!!」







『桃色day』







「うっ…くそ…っ」

4人で折りたたみ式テーブルを囲み朝食を取る中、1人しゃくり泣く青年がいた。
先ほどからフォークをテーブルにやかましく叩きつけているだけで食事にはまったく手をつけていない。

「…ガル・ト。早く食べなよ」
「あぁぁ俺に話しかけるなあぁあぁ」

「うっとおしい奴…」

クラヴァットの少年に食べる事を促されても、青年は同じように嘆くだけだ。
少年の隣に座っていたリルティの青年は呆れたようにため息をついた。


「何があったのさ?僕で良かったら相談にのるよ」
「っ!!!」

その少年にとってはただの親切だったのだろう。
しかし、青年――ガル・トにとってはただのありがた迷惑ってヤツだけだった。

今――ガル・トの目の前で黙々と食事をしているルーウェインに告白未遂の行為をした………


なんて死んでも言えない。

相談なんてできない。


「いいから、俺は大丈夫だって。分かったよ食うよ」
「あ、そう」

少年は安心したように息をつくと、自分の空になった食器を持ち川へ向かっていった。
リルティの青年は自分で片付ける気は無いのか、この場に居座ったままだ。
続いてルーウェインも食べ終わり、食器を持ち立ち上がった。

クラヴァットの少年が向かった川の方角へ、ルーウェインも向かう。


「…お前、本当様子おかしーぜ?なんかあったのかよ」
「なんも無いって…マジで」

ガル・トはスクランブルエッグをフォークですくい、口に運びながら答えた。
リルティの青年は頬杖をついてその様子を見守る。
明らかに、ガル・トの目が何かあったと語っていた。


「キルス…俺、本当何も無いから。サンキューな」
「…おぅ」

リルティ――キルス=ウッドは怪訝そうな視線をガル・トに向けながらも席を立つ。
一方のガル・トは朝食をすべて食べ終えて、キルスの分の食器も持って川へ向かった。

川は、野宿していた所から、1分ほど歩いた場所にあった。



そこにはあの愛しい姿が。
ルーウェインはまだ川で食器を洗っていた。


「る…ルーウェイン」
「ん、ガル・トか」


彼が濡れた羽に覆われた手を川から出し、ガル・トに振る。
その可愛らしい姿に、何かを打たれたようにガル・トの顔は一気に桜色に染まった。


――もうすぐ三十路のくせして手なんか振るなっ!!!

高鳴る鼓動を片手で抑えながらガル・トはルーウェインに歩み寄る。
彼の隣に座って食器を川に入れて手でこすり、汚れを落とし始めた。


昨日あんな事があった為か、ガル・トは以上なほどまでに緊張していた。
ルーウェインとの距離は僅か10センチほどしか無い。

激ニブのルーウェインの事だ。
ガル・トの言いたかった事を察してはいないだろうが、それでも意識はしてしまう。
ルーウェインの隣で食器洗いをしていたガル・トの顔はみるみる真っ赤に染まっていった。


「…ガル・ト。昨日の、話したかった事とはなんだ?」

「え゛っっ!!?」

突然すぎたルーウェインの言葉にガル・トは食器を落としそうになる。
それを慌てて取り直そうとした彼はその皿の端で指を切った。

「いっだ!!!」
「む、大丈夫か?」

それほどの傷でもないのに思わず大声を上げてしまい、しまったと後悔する。
そのせいでルーウェインが心配したらしく、ガル・トの指を覗き込んだ。
急に接近した彼に驚いたガル・トは肩を跳ね上がらせる。

よく見えないのか、ルーウェインはガル・トの指を手にとってまじまじと観察する。

触れられた事によってガル・トの顔の赤みは更に増した。


「いや、だ、だいじょぶだってこんくらいっ。ケアルかける程でもないしっ」
「ん、そうだな。このくらいの傷、舐めておけばいいか」

へ?とガル・トが顔に出した瞬間には、

ガル・トの細い指はルーウェインの仮面の下に持っていかれていた。


仮面の下にいった指に、慣れぬ感触が這う。
舌だ。



「~~~っっ!!!うぉおぉおお!!?」
「、鉄の味がする…でもこれで大丈夫だ」


舐められた、という事実に気が付き、ガル・トは急速に手を引っ込める。

――死ぬほどビビった……!!!

けれど同時に死ぬほど嬉しかったガル・トは、緩む頬を必死に抑え始めた。
俯いて震えるガル・トを見、ルーウェインは首を傾げる。

「ガル・ト…?まだ痛いのか?」
「や、ち、違う!!!もう大丈夫だって!!」

無意識なのだろうか、下から覗き込むようにしてガル・トを見ているルーウェインは自然と上目遣いになっていた。
僅かに傾げられた首が更に可愛らしさを増す。


「(あぁあ~~っ!!!この天然がぁぁっ!!!)」
「良かった。怪我は早いうちから治しておくのがいいからな」

ルーウェインは仮面の下で安堵のため息をつき、食器洗いを再開した。
ガル・トは座った状態のまま、その横顔を見詰める。




――できる事なら、今すぐにでもこの細い体を押し倒して襲いたい。
ガル・トならルーウェインくらい簡単に押し倒せるだろう。
力なら断然に勝っているし、彼の抵抗なら痛くもかゆくもない。

年頃なだけにガル・トの中では欲望が渦巻いていた。

押し倒したら、とりあえず仮面の下を覗きたい。
キスもできなかったら話が始まらない。
疑問だが下半身はどうなっているんだ?
挿れられるのか?




「(っ~~何考えてんだぁあぁぁあぁ!!!!!)」



自分が少しでも考えてしまった事に反省し、ガル・トは頭を激しく振る。
気付いていないのか、ルーウェインはガル・トの方には見向きもせずに食器洗いを続けていた。

「(今のはヤバかったなぁ…)」


火照った顔を隠すように、ガル・トは頭の黒い帽子を深くかぶる。


縮まるように体育座りしているガル・トに気付いたのか、ルーウェインが首を回転させて横にいる彼を見た。
顔を膝にうずめている為に表情は伺えない。




「…ガル・ト」
「ん…?」

「お前が一番だ。私の」


驚いた表情で顔を上げたガル・トを見て、ルーウェインは仮面の下で笑った。

゛仲間として゛の゛一番゛なのだろうが。
ガル・トは口角が上がるのを抑え切れなかった。








「ニヤニヤすんなよ」
「なんでー?ははは幸せなときは素直に笑うのが一番さーー」
「いや正直に気色悪ぃんだけど」
「応援しろよ!!俺絶対発展するからな!!」
「だから何がだ!!!」


[END]


あとがき

すっげぇ久々の更新です、すみません。
なんかこう初々しいのが好きみたいですね私。
後から読み返すと短っ!!てよくなるんですけど…書いてるときはよくここまで書いたなーってなるんだけど…
何はともあれ人外受け大好物です。


モドル