君の小さなアリス


貴方は『不思議の国のアリス』を信じますか。

白い兎を追いかけて、たどり着いた先はとてもとても可笑しな小さな世界――。


小さくなるなんて、あり得ない。
そんなのひみつどうぐの中だけだ。

そう思っていたお堅いアリスのおはなしです。

 


「っう、うわあぁぁぁぁぁあぁぁ!!!?」

早朝――。

ドダイトスは喉を潤そうと近くの湖まで足を運んだ。
透き通るような水面に顔を映す。

しかし、そこに映ったのは。


「なっ、なな、なんでだ!!!」


何故か。

50cm程にまで縮んでしまっていた、自分の姿で。
やけに体が軽いと思ったら―――、とドダイトスは絶望に暮れる。

「ふ、ふざけんな……なんで、本当に……ヤバい…こんな姿あいつに見られたら……っ」

あいつ………
もうお察しだろう。

あの変態ホモ鳥だ。

こんな姿見られたら、どんなにされるか分からない。

身の危険を感じたドダイトスは、今日一日姿を隠そうと決意し、近くにあった森に入っていこうとする。
――しかし。

「おーい、ド・ダ・イ・ト・ス!!会いに来たぜ☆どこだー?」
「ぎゃあぁっ!!」

最悪だあいつ空気読め!!!

腹の中で暴言を吐きつつ、ドダイトスは上空にいるムクホークを背にさっさと森に逃げ込もうと足を進めた。
が、運が悪かったのか、足を側にあった岩にぶつけ。

見事すっ転んだ。

「うぐぉっっ」
「ドダイトス?」

来た…!!

ビクリと体を震わして、ドダイトスは恐る恐る後ろに振り向いた。
――そこには当然あの変態がいて。

その変態は。


ドダイトスを見るなりいきなり鼻血を噴いた。


「だあぁなんだお前!!かかったぞっ!!」
「ど…ドダイトス……!?ど、どしたんだよ、その体…っ、ヤベ……かわい…っ発情してきた…」

ハァハァと息を荒くし出血を続行している変態を前に、ドダイトスはため息をつく。
ここは、覚悟を決めるしか無いだろう。

今の状態ではバトルは無理だし、そもそももとの状態でもムクホークに勝てるかは定かではないし。
こいつは絶対バトルでは手加減するからなぁ……もしかしたら勝てるかもしれないけど。

とりあえず、ドダイトスはムクホークが落ち着くまで待つ事にした。


「……で。落ち着いたか」
「ドダイトスっ…な、んで、んな姿になったんだ…?一種のサービスか……?」
「んなわけあるかボケ!!」

いつも以上に阿呆な発言を連発する鳥に、ドダイトスは痺れを切らして怒鳴る。
しかし体が小さくなってしまったせいか、なかなかいつものようなドスの利いた声が出てこない。

「あ゙ぁくそっ!!腹が立つ!!!」
「いつから、そうなってたんだ?」


鼻血は止まったらしく、まだ僅かに頬を赤くしているムクホークが、ドダイトスを見下ろす。
――ムカつく。
いつもは自分の方が背が高いのに。


「朝起きて、水飲もうと水面を覗いたら、だ!!俺は何もしてないってのにっ」
「そうか……やっぱ可愛いなー…」

どさくさに紛れて呟くムクホークを一発殴ると、ドダイトスは不機嫌そうにずかずか歩き出した。

――しかし。


「おい。ちょっと待てって」
「!!?」

予想以上の速さで彼に追い着かれ、ドダイトスは思わず足を止める。
――やはり、足が短いせいで速度が下がっているのか……。

小さいとはなんて不便なんだ


あぁ……進化前に戻った気分だ。

早く俺の3.2mの身長を返してくれ。


「…俺に話しかけるな、この変態ストーカーホモ鳥が」
「へ、変態……ホモ……。そりゃ無ぇだろオイ。そもそもオレノーマルだし」


男の俺を追い回したりセクハラ発言してる時点でお前はホモだろっっ!!!


こいつ認めてなかったのかとムクホークを軽蔑の眼差しで見詰めるが、ムクホークはここから動く気が無いようで足を地面に
パタパタさせているだけだ。
さっさとどこかへ行け………。

「ていうか小さくなったら目が大きくなったんじゃねぇか?くりんてなってる」
「……………」
「ちょっといい?」

「っぉわぁ!!?」

ふわりと体が浮いたような感覚に陥り、ドダイトスは思わず目を瞑る。
――いや、感覚じゃない。本当に持ち上げられたのだ。

他の誰でもない、この阿呆鳥に。

「なっ、おま!!!」
「お、かるー。ドダイトスすごい軽くなってんぞ。25kgくらい?」


25……。

それって結構重くないか?


こいつ…、
昔は鳥ポケモンのくせして飛べもできないで、ずっと俺の後ろを歩いて、バトルもまともにできなかったあのムックルが…

いつの間にこんなでっかくなって、力もついて…


なにか、一応同期のムクホークに子の成長を喜ぶ親の感情を抱いてしまった。


「ほーら、たかーいたかーい」
「ぎゃあぁっっ!!?」

いきなり視界が揺らぎ、ぶわ、と体全体に風が当たる。
突然の鳥の阿呆行為に、ドダイトスは悲鳴にも似た叫びを上げた。

「うぉお馬鹿、降ろせ!!!」
「なんでだよ、楽しくね?」

楽しくないっっ!!!

そう叫ぶ暇も無いほど振り回され、ドダイトスは少しの吐き気を覚えた。

やはりこいつはまだまだガキだ。
そう実感する。


「あー楽し。ちょっと疲れたかも」

飽きたのか、はたまた疲れたのか、ムクホークはやっとの事でドダイトスを解放し、嬉しそうに笑った。
――怒る気が失せる……


「っ黙れ、馬鹿」

とりあえずいつものように文句を吐き、ドダイトスはそっぽを向く。
調子が狂うと、小さく舌打ちをした。

――俺は、嫌いなんだ。こいつが。

さっさと別れたいけど腐れ縁ってヤツだ。
それにムクホークはチームのエース。
だからって俺がボックス組になるつもりは無い。

そもそも俺がボックス組になればこいつもぴったりくっついてくるに違いない。


「けど、どーすんだよホント。他の奴に見せるわけにもいかないだろ?」
「……………そうだな」

「『かえるの王さま』じゃねぇのか?キスしたらもとの姿に戻るかも……ぉうぶっ!!!!」


勿論思い切り殴られたムクホークは衝撃で地面に羽をつく。
こいつの口からはセクハラ発言しか出てこないのか…!?

ふるふると阿呆鳥を殴った前足が怒りで震える。

それにしても復活の早い奴だ。
殴った2秒後に、ムクホークはすぐさま立ち上がった。


――ストーンエッジを喰らっても平然としてられるのは俺が防御力を鍛えてやってるおかげじゃないのか…?
鍛えてるつもりは無いが。


「小さくなってもきっつい……いつものパンチよかマシだけど」
「お前いい加減110番通報するぞ」

羽で頭をさするムクホークに冷たく言い放つ。
こいつのいつもの行為を警察に訴えたら普通に犯罪と言われると思う。


「オレにとしてはさ。皆に見せるとまずいけどね」
「お前には関係無いだろう。俺が小さくなろうがどうだろうが」


「そーゆうんじゃなくて。オレはそんなかっわいいドダイトスを他の奴に見せたくないって事だけ…、ってどうあぁぁぁぁっ!!?」


また妙な発言をした鳥を背中の木で思い切り殴り飛ばそうとするが、小さくなっているせいでリーチが短いのか届かなかった。
危機一髪で後退をしたムクホークがもとの位置に戻る。

「っぶな…!!こわっ!!」
「お前が変な事を言うからだろ!!」
「だって本当の事だし……。ドダイトスはオレだけのだし……」

―――誰がお前のだ!!

この阿呆鳥の独占発言が出るたびに顔に熱が集まる、自分を殴りたい。
照れてるわけじゃなくて、けど憤慨してるわけじゃなくて、


「ドダイトス?」

 

――今、小さくて良かったかもしれない。


「なんで俯いたままなんだよ。可愛い顔見せろよー」
「黙れ変態!!」


嬉しさで、僅かに緩む頬を見られないから。

 

 

 

「で、本当にどうすんだよ。小さいままでいいのか?」
「…『かえるの王さま』かもな」
「っうぉぉっし!!キスしていいのか!!?」
「誰も言ってないだろ、そんな事っっ!!!!」

 

[END]

 

あとがき

遅くなりまことに申し訳ございませんでした!!!
なんか2匹をいちゃいちゃさせたかっただけですね、すみません…!
リクに答えられているかめっちゃ心配ですがっ(`・ω・´;)
リクエストありがとうございました!!

 

モドル