彼は、ただ街を歩いていただけだった。
トレーナーから自由時間を貰い、ただ暇な時間を、歩く事で潰そうとしていた。
それが、とても衝撃的な日になろうとは、予想もしていなかっただろう。
「っくあぁぁ…」
大きくあくびをする。
すらりと伸びた背
長い足
誰もが理想にするようなスタイル。
彼……バシャーモは、電気の街、ナギサシティにトレーナーと訪れていた。
「暇だ……」
自分に向けられる視線も気にせず、ベンチに腰掛ける。
今、自分の主人は買い物に行っている。
しばらくは帰って来ないだろう。
「あー…、暇…」
口を開けば、ため息と暇という言葉しか出てこない。
手足をブラブラさせて、拳から軽く炎を出してみる。
それでも特に楽しくはないが。
「バトルしてぇな…」
「おい!そこのバシャーモ!!!」
影が映り、顔を上げる。
そこには、2体のポケモン。
ゴウカザルとエンペルトだ。
「……なんだ?」
「私と、ポケモンバトルをしないか」
エンペルトに、挑発するような視線を向けられ、ムッとする。
まあ、丁度バトルをしたいと思っていた所だ。
そう思い、バシャーモはベンチから立ち上がった。
「…ゴウカザル。分かってるな?こいつに勝った方が、あいつを貰うんだからな」
「分かってらぁ」
あいつ、とは何か。
少し気になったが、今はバトルに集中しなくては。
バシャーモは、手首をコキコキと鳴らす。
「行くぞ!!゛ハイドロポンプ゛!!!」
スタート合図も無しに、エンペルトが先制した。
タイプ相性から見れば、バシャーモは圧倒的に不利な立場。
しかし、バシャーモは、そのハイドロポンプを軽やかなジャンプでかわした。
「チッ、こざかしい!!゛アクアジェット゛!!」
今度は上空にいるバシャーモにアクアジェットで攻撃する。
が、それもすぐにかわされると、上に回られた。
「゛にどげり゛」
空中にいるまま、腹に蹴りを入れられる。
かなりの攻撃力だ。
痛みに気をとられていれば、すぐに次の攻撃が。
「゛スカイアッパー゛!」
顎にパンチが炸裂し、更に上空へ突き上げられる。
そして、また、背後に回られた。
バシャーモの足から炎が吹き出す。
「゛ブレイズキック゛!!!」
「ぐあぁっ!!!」
背中にとどめの攻撃をされ、エンペルトは地面のコンクリートに叩きつけられた。
バシャーモは地面に降り立つと、その姿を見て鼻で笑う。
「ふん、そっちから誘っておいてその程度か」
「っつ…!」
「エンペルトッ」
彼だって、かなりの実力を持っている筈だ。
なのに、反撃をする暇をも与えず、ノーダメージでそのエンペルトをノックアウトした。
このバシャーモは、とてつもなく強い。
ゴウカザルは、戦っても無駄だと、エンペルトに駆け寄り彼の肩を担ぐ。
少し重いが、放っておく訳にもいかない。
「…悪かったな、時間とって」
「お前はいいのか。俺と戦わなくて」
「あんた、凄い強いよな。オレがここでやられたら、誰がこいつ連れて帰るんだよ」
熱血なゴウカザルだが、今回はこいつと戦う気がしない。
ゴウカザルは、バシャーモにくるりと背を向けた。
「あ、あと……」
「あ?」
「エンペルト!!?どうしたんだ!!!」
バシャーモがゴウカザルに疑問を出そうとすれば、また別の声がこちらに届く。
何かと思えば、ゴウカザルの表情がパッと明るくなった。
「ドダイトス!!」
「おい、どうしたんだエンペルト!!」
ドダイトスだ。
どこのトレーナーのポケモンだろうか。
「ど……どだい…とす……」
「酷い傷だな……、どうしたんだ?」
想い人に無様な姿を見られたせいか、エンペルトの頬が朱に染まる。
……なんだ。そういう事か。
1匹で、勝手に納得した。
しかし、このドダイトスのどこがいいのか…
別段ルックスが良いわけでもないし。
強いわけでもなさそうだ。
「………ぃ。聞いているか?」
「は?何か用か」
いつの間にか、ドダイトスに声を掛けられていたらしい。
バシャーモは顔を上げる。
「だから、ホウエンから来たのかと聞いている」
「だったら何」
「いや、その……。エンペルトを倒すなんて、随分と強いんだな。体も鍛えられてる」
突然、片腕を握られた。
ビクッとするが、平静を保とうとする。
「あ…あぁ。俺の主人は、バトルが好きでな。トレーニングもキツいんだ」
「俺もそうだ。訓練は、そこまでいかないがな」
お……落ち着け。
相手は雄だ。
接近してくるドダイトスの、体温が伝わってくる。
思わず、握られていた腕を振り解いた。
「あっ…、俺、もう行くから!」
「は?お、おいッ!!!」
そのまま彼に背を向けて走り出す。
心臓が早鐘のように鳴っていた。
「っはァ……」
しばらく走ってから速さを緩める。
……惚れた?
この俺が、あいつに?
「ドダイトス……」
人生初めての恋。
彼の名前を呼んだ。
また、彼に逢える事を、祈った。
[END]
あとがき
遅くなって大変申し訳ありませんでした!!!
しかも文グダグダですみません……。
これからもこのサイトに飽きないで、お越し下さいね。
モドル