「マァナー」
「こいつがマナフィ……」
預かり施設にすっ飛んできたハッポは、目の前にいる生物をまじまじと見つめる。
水色の体、つぶらな瞳、
どこをとっても可愛らしいポケモンだった。
「どうにか喋れないもんかなぁ…」
ここの職員が言っていたが、このマナフィはまだ生後5ヶ月らしい。
捨てられていた、可哀想にと哀れんでいた。
「…………」
「マナー」
一匹で考え込んでいれば、マナフィが声を上げる。
――よく考えたら、こんな子供が『ハートスワップ』とか言うややこしい技を使うはずが無いじゃないか。
しかもからし達と知り合いってワケでもなし。
距離も離れていたし。
…来ただけ無駄だったかもしれない。
「はぁ……八方塞ってヤツか…」
「マナ?」
「や…なんでもねぇよ」
マナフィが自分を見て首を傾げたのに、ハッポは微笑みながら言う。
途端、マナフィの頭に生えていた二本の触覚のような物が光った。
瞬間にしてその光は部屋全体を包み込む。
「っな…」
眩しくて閉じていた目を開いた。
なんの変わりも無い。
部屋の状態はさっきと同じだった。
「……なんだ?」
ベッドの上で笑うマナフィもさっきと同じ。
……別に何も無いか。
「じゃあな。オレは帰る」
マナフィに手を振り、ハッポは部屋を出た。
受付にいたポケモンに軽く頭を下げ、出口をくぐる。
そして快晴の空へハッポは翼を広げて飛び立った。
「ただいま…」
結局なんの手がかりも無いまま基地へ帰る。
会わせる顔が無い……。
「ハッポ、おい!!!」
いきなりからしの声が響いた。
―――いや、性格にはネロか。
扉の向こうからからしが覗く。
「なんだよネロ」
「ちげぇょっ!!!
オレはからしだ!!!元に戻ったんだよ!!!!」
そのからしの一言にハッポは一瞬呆気にとられた。
しかしすぐに平静になる。
「またオレをからかうつもりか?」
「違うって!!おい、ネロも来いよっ」
「あら、帰ってましたの?ご苦労さま。けどもう事件は解決しましたわよ」
また奥から今度はネロの姿が。
グルか?と思ったが、さすがにそれはないだろう。
けどいきなり冷静にはなれない。
「どういう事だっ。ちゃんと説明しろ!!」
「さっきいきなり元に戻ったんだよ。な?」
「そうですわ。最初に入れ替わったときと同じような感覚で」
二匹の言葉を聞いて、一気に脱力した。
結局、数時間で解決したじゃないか!!!
「ったく…」
「と、いうわけで。依頼こなすんだろ?さっさと行こうぜ」
「私はもう帰らせていただきますわね。ふふ、やっぱり自分の体が一番ですわ」
ネロは上機嫌で基地を後にした。
基地内は二匹きりになる。
「疲れた…」
「それはオレのセリフだぜ。入れ替わっちまったんだからな?」
「あぁ……」
ふとして、ハッポは思い出した。
確か、この基地に来てネロとからしがもめていたとき。
あんな事を叫んでいた。
「……からし」
「ん?」
「あれ……本気じゃないんだろ?その場の勢いってヤツ
――『ハッポはオレだけのものだ!!オレの体利用して、これ以上なんかしたらぶっ飛ばすぞ!!!』――
って…な」
あの台詞だけ鮮明に覚えていた。
正確にはネロボイスで言われたのだが……どうせならからしボイスで言ってほしかった。
あんな台詞もう二度と聞けないだろうし。
しかもこいつの事だ。
『冗談にきまってるだろ』とか言って笑い飛ばしてからオレをからかうに違いない。
しかし。
「ばっ………!!ちっ、ちげぇに決まってんだろ!!!は、本気にしてんのか!?自惚れんなよな!!!」
何故か怒鳴られた。
しかも、顔は真っ赤。
こ、こいつ、いつからツンデレになったんだ?
ていうか……
コレ期待していいんだよな!!!?
「からし……お前さ」
「なんだ……よ……」
からしの手首を掴んで、無理矢理引き寄せる。
そして彼の唇に口付けた。
「―――――っ!!?」
「どうだ?オレを恋人にする気になったか」
「~~っ!!この、ヘタレ王が何やらかしとんだ!!!だからオレはお前みたいなヘタレはタイプじゃねぇ~~っっ!!!!」
事件はめでたく解決しました。
[END]
あとがき
からしツンデレなのかこれ。
いやあれは誘い受けだよ。もう分からん。
この二匹の関係は、いままだ恋人同士じゃないんですよ。
またCP考察の方に書きますのでそちらでどうぞ。
ではこの話は終わりです。三部完結とか恐ろしいな。