トレジャータウンに立つ一本の木の上。
その木の枝に座り、彼は読書していた。
「…あいつにでも、会いにいきますか……」
彼――ヨノワールは、ボソリとつぶやく。
あいつ、とは。
「ヨノワール」
この、声の主。
あちらから出向いてきてくれた。
「ジュプトルですか?貴方から来るなんて珍しい。よっぽど私の事が好きなんですね」
「殺すぞ」
「なんの用ですか?」
その質問に、ジュプトルは少し顔をそらす。
そうしたかと思うと、ジュプトルは頬を赤く染めて叫んできた。
「探検に行くぞ!!!二匹で!!!」
「…それは、リーダーの指示ですか?」
「ちっ、違う、けど…。とにかく!!行くぞ!!!」
かなり照れているような彼を見て、ヨノワールはニヤリと不適な笑みを浮かべる。
その笑みを見られないように、ヨノワールは地面に降りる。
「二匹きりでなんて、私に襲われても知りませんよ?」
「今日の依頼はミステリージャングルだ。行くぞ」
依頼内容の書かれた紙を見ながら、ヨノワールの言葉をスルーした。
今日こそ、と、決意したのだ。
自分が゛攻め゛という立場になる事を。
――――――――――ミステリージャングル――――――――――
相変わらずの密林の中を、オレたちは進んでいた。
ヨノワールが前を歩く状態で、オレは後ろを警戒しながら歩く。
「怖かったらいつでも抱きついていいですよ」
「黙れ変態。依頼に集中しろ」
あぁぁ!!
またいつもの反応をしてしまった。
もっと攻めらしく、と意識していてもやはり癖というものが……。
押し倒しは無理があるか。
あちらの方が力があるし……。
言葉攻めも、こっちが言っても、ヨノワールの事だ。
絶対押し倒されるに違いない。
うーん、と心の中で唸りながら考えていれば、ヨノワールが突然立ち止まる。
どんっ、とその背中にぶつかり、オレは鼻を押さえた。
「いって!なんだ!?」
「こんな所に睡眠の種が落ちていました」
その言葉にゾッとする。
この間もあった気がする。
こいつと二匹きりで探検に行ったとき、睡眠の種をいきなり食わされて襲われた事が。
「そろそろ昼です。これを食べてください」
じりじりと迫ってくるヨノワールに、オレはたじろぐ。
このままではまたいつもと同じだ!!
そのとき、オレの武器である、腕の葉が目に入った。
――そうだ!
「さぁ、口を開いてください」
「…あぁ。
食うのは、半分ずつだ!!!」
ヨノワールの手の中にあった睡眠の種を、はたき上げる。
油断していたヨノワールは、手中から種を開放してしまう。
オレの腕の葉が光り、刃物に変わった。
「゛リーフブレード゛ッ!!!」
空中で踊った種を、リーフブレードで切り裂く。
見事真っ二つに割れた睡眠の種の片方を、ヨノワールの口に向かって思い切りはたいた。
唖然としていたヨノワールの口に、睡眠の種が放りこまれる。
途端、ヨノワールの目がとろんと眠そうに垂れた。
「(よっしゃあ!!!)」
腹の中で思い切りガッツポーズをとる。
オレの計算は正解だった。
睡眠の種の半分だったら、ヨノワールも完全な眠りにはつかないだろう。
この力も出なく、立つ事もままならないヨノワールで遊んでやろう。
「な……にを……」
「ふん……。いつもオレを弄んでいる復讐だ。ほら、立てるのか?その状態で。オレの所にもたれてもいいんだぜ」
ヨノワールの顔が珍しくも赤く染まった。
……べ、別に可愛いとかそんな事は断じて思ってないからな!!
「っどういう風の吹き回しですか!?私はそんな事絶対にしませんよ!!!」
「ほーぅ…。ま、地べたに倒れ込むよりかはマシだと思うんだがな」
力の入らないヨノワールは、地面にしゃがみ込んだ状態でオレを見上げている。
……上目遣い可愛いとか思ってないからな!!!
「さて、飯でも食うか」
気を紛らわせる為に、オレはヨノワールの前に座ってトレジャーバックを開ける。
中からリンゴを出し、そのままかぶりついた。
ヨノワールも腹が減っているのか、オレがリンゴを食べる様子をじーっと見詰める。
オレが目の前にいるのに何もしてこないヨノワールに、少し違和感を覚えた。
「…わ、私にも少し頂けませんか」
屈辱、という表情で、ヨノワールはオレの食べているリンゴを分けて欲しいと頼む。
そこで、オレはある事をおもいついた。
「…いいぜ。ほら、顔近付けろ」
「は……」
少し顔を近づけたヨノワールに、口付ける。
オレの口の中にあったリンゴを、ヨノワールの口内に転がした。
そうしてからすぐ唇を離す。
「――っ!!や……っ」
涙目になっているヨノワールを見て、ドキリと心臓が高鳴った。
なんだ。
自分からいつもしてくるくせに、されるのは嫌なのか。
「だ…誰がこんな食べさせ方をしろとっっ!!!」
「顔が頼んでたぜ?」
嘘を適当に言ったつもりだったが、ヨノワールの顔は朱に染まる。
「……っわ、私は!!貴方にこんな事をされる覚えは…っ!」
「オレだっていつもそうだった。だから、お返しだぜ」
そうして、彼らは朝までギルドに帰らなかったそうだ――。
[END]
あとがき
楽しかった(・∀・)
個人的に満足です。
いやぁ、ヨノワール受けはいいですね。