「……………………」
朝起きて。
彼は棚に見慣れないものを見つけた。
「゛ホレグスリ゛…?」
久し振りに゛やりのはしら゛に泊まらずに飲んでから自宅に帰り、そのまま倒れたが ――。
昨日は酔っていたので気付かなかった。
「こんな薬、知らねぇぞ」
ホレグスリ――惚れ薬。
物語の中に出てきたりする、自分に対して、相手に好意を持たせる薬。
相手に、惚れさせる―――?
「う…」
な、なんでだ!!
なんでディアルガの顔が!!
別に、これが本当に効果があるとか、そういう事も分からないのにっっ。
だからっていってあいつに飲ませるとか、そういう下心は一切無い――
って
「オレは末期かあぁぁぁぁ!!!!!」
な、なんちゅう事をぉぉ
けど、けど、けど――――
トントン
「……パルキア?いるか?」
扉が叩かれた音の後に、聞きなれた声がした。
ディアルガだ。
パルキアは、もう既に次の行動を取っていた。
その゛ホレグスリ゛と書かれたラベルの貼られた瓶を取り、キッチンのやかんを取る。
水を突っ込み火をかけた。
そして玄関に走って扉を開ける。
「ゼェゼェ……よ…よぉ。ゲホ、よく来たな」
「だ、大丈夫か?別に急がなくても良かったのに」
「いいから上がれ」
パルキアに案内された、彼にしては綺麗に掃除してある和風な部屋に、ディアルガは座った。
パルキアはキッチンに急ぐ。
全力強火にしておいたが、まだ湯が沸いていない。
チッと軽く舌打ちするとパルキアは口を開けた。
「゛かえんほうしゃ゛!!!!」
コンロに向かって炎を放つ。
やかんが瞬間、甲高い音を出してゆげをふいた。
やかんをひっつかむと今度は食器棚からマグカップを二つ取り、そこに湯を注ぐ。
テーブルの上に置いてあったインスタントコーヒーの袋を手にし、二つの湯が入ったマグカップに入れた。
一方のカップにミルクと砂糖を大量に入れ、そして、もう一方のカップに、瓶に入っていた例の薬をそこそこの量入れて、ディアルガの待つ居間に運んだ。
和室にあるテーブルに、カップを置いた。
「気が利くな。ありがとう」
礼を言い、ディアルガはミルクも砂糖も入っていないコーヒーを取る。
彼がブラックが好きだと知っているのは、長年の観察の賜物だ。
そしてパルキアは砂糖とミルクを入れた甘すぎのコーヒーを口にした。
そして相手の様子を伺う。
惚れ薬の効果は、あるのだろうか。
「…なんだ?じろじろと見て」
「!!?いやっ、別にっっ」
こちらの様子に気付き、ディアルガは顔を上げる。
それにギクリと肩を上げるが、なるべく平静を装って受け流した。
パルキアは、もう半分以上諦めていた。
ディアルガはもう結構な量のコーヒーを飲んでいるが、さっきから全然様子が変わらない。
やはり、惚れ薬なんて所詮物語の中だけの話なのか――。
そう思った、矢先だった。
「ん……」
突然、ディァルガがカップを机に置く。
心なしか、顔が赤い。
「でぃ、ディアルガ?」
「ぱるきあ……」
こちらを見たディアルガの表情。
とろんとし、潤んだ目、赤く染まった頬。
鼻から、赤い液体が飛び出した。
「やっ、やべ、ティッシュ……」
「体が熱い……パルキア……」
ティッシュを取ろうと手を伸ばせば、ディアルガが自分の胸にうずまってくる。
また赤い液体が。
このままでは大量出血で死ぬ。
「ディアッ、ディアルガッ。お、おち、落ち着け。ちょっと近いって」
「ぱるきあ…すき……」
効果が
でてきた。
しかし、いざこんな事をされてもどう対応すればいいものか。
ディアルガが、求めるような瞳で見上げてきた。
マジやばい。
「パルキア……」
「うぅぅ……」
自分がヘタレ属性だなんて、認めたくないっ。
ここは、いっちょキスでも―――
「……っディアルガ」
彼の名を呼び、顔を近づける。
ディアルガが目を閉じた。
あぁ本番か、と思うと、体はまたカチンコチンに固まる。
「ぐ………」
駄目だ。
先に進めない。
惚れ薬なんて物を使ってこいつを弄んでいるのだ、実際。
やはり罪悪感というものを覚える。
本当だ。
別に勇気が無いとか、そんな事じゃない。
「…どうした?」
「い、いいいやっ、そのぉ……」
「仕方ないな、お前は」
やけに弾んだ声で言われ、え、とディアルガの顔を見る。
すると、唇に柔らかな感触。
俗に言う、キス。
「――――ッッ!!!」
「ん?どうした?」
子供のような無邪気な顔で聞いてくる彼から、ズザザとすごい勢いで離れた。
もはやパルキアの顔は林檎の如く赤く染まっている。
「ッッ、――……っ!!!」
声に出ない叫び声で、パルキアはしりもちをついた状態のままディアルガを見据えた。
ディアルガはこの期に及んでまだきょとん顔をしている。
「…パルキア?嫌…だったか?」
「ぐぐぐっっ、いや、違う!!そういうわけじゃないけどッ!!!」
「私は、お前が好きなんだ。お前は、私が嫌いなのか?」
嫌いだったら惚れ薬とかいう薬をお前に試すわけがないだろ!!
そう心の奥底で思ったが、口には出さない。
自分から言いたくないのだ。
こいつは、自分からオレに好きだと告げてきてくれている。何度も。
だから、言う必要など―――。
「教えてくれ。お前の気持ちを。…私は……不安なのだ。お前が、私をどう想っているか。そんな事を考えると」
不安
気持ちが分からないと。
自分が嫌われているのではないかと。
不安なのか。こいつは。
「……べ、別に、嫌いじゃねぇよ」
寧ろ、愛している。
こんな薬を使わなくても、お前を自分のモノにしたい。
「じゃあ…、せめて、こうさせていてくれ」
そう言って、また彼は自分の胸の中にうずくまった。
ディアルガの体温が直に伝わってくる。
顔が赤くなっているのは、自覚していた。
「オレも……好きだから、な」
つぶやいて、彼の体に腕を回した。
数十分後、薬の効果が切れて、パルキアの腕の中にいたディアルガは、顔を真っ赤にしてパルキアにドラゴンクローをぶちかましただとか。
勿論、薬が効いていた時の記憶は残っていなかった。
[END]
あとがき
終わった……
相変わらずメチャクチャだけどな
パルディア書くと結構キスシーンが出てくる。ディアルガからの。
パルキアヘタレ万歳になってるなぁ、オレ。