「チッ……、茨が厄介だな、ここは」
大量の茨が毛に絡みつき、獣はうなりに似た声を出す。
その茨を鋭い自慢の爪で切り裂きながら、その獣は足を進めて行った。
「ハブネークの鳴き声が、ここら辺から聞こえた筈だ」
彼は、宿敵である、ハブネークを追っていた
ザングースだ。
敵対同士であるザングース族とハブネーク族…
一族の中でも敵意識が強い彼は、ハブネークの鳴き声を聞いてここに嗅ぎ付けて来のだ。
「おい!!ハブネーク!!!いるんだろ、出て来やがれ!!!」
じれったくて大声を出す。
そこで、茨の向こうに光が見えてきた。
出口だ。
「うらぁっ!!!」
最後の茨を切り裂き、出口を切り開く。
予想通り、そこには彼の獲物がいた。
ザングースの口元が、不適に緩む。
「よぉ…、テメェがハブネークだな」
声をかければ、そのハブネークが素早く振り返った。
その顔が恐怖に引きつる。
「なっ……」
「オレぁ今、無性に血が見てぇんだ。……テメェに命は無ぇぜ」
鋭い爪が、光で反射する。
近寄ってくるザングースに、ハブネークは怯える様に後ずさりした。
-----まさに、鼬と蛇の対決だ。
「゛ブレイククロー゛!!!!」
前触れも無しに、ザングースはハブネークに襲い掛かる。
間一髪でハブネークは攻撃をかわした。
「っ……!!」
「チィッ、゛きりさく゛!!!」
また間髪入れずに、ザングースが襲い掛かる。
が、今度も思い切り攻撃を外し、ザングースは前によろめいた。
鋭い爪が、目の前にあった木に刺さってしまう。
「くそっ!!おいテメェ、逃げてばっかいねぇでオレと戦わねぇか……」
振り向いたザングースの視界に映ったもの。
それを見て、彼は驚愕した。
「げ……、なっ、何………」
絶対の、永遠の、最大の宿敵だと思っていたハブネークの瞳から
一滴の雫が零れていた。
「お願いだから…ッ、ここを去ってくれ……」
「ば、馬鹿言うなっ!!オレは、やっとの事で宿敵のハブネーク族と戦えると……」
そう怒鳴ったが、ハブネークの上げた顔を見て、ザングースはうっと口を紡ぐ。
潤んだ瞳、赤く染まった頬、震える唇-------
不覚にも、可愛いと思った。
「っお前…その傷……」
「…さっき、茨で切ったんだ。だから、今は戦えない。また、他を当たってくれ」
ハブネークの首だと思う位置に傷を見つけ、心配そうに顔を覗き込むが、そっぽを向かれてしまう。
普段だったら、こんな態度を取られたら確実に相手を殴っていてるだろう。
しかし、今回は違う。
「馬鹿野朗。血が出てるじゃねぇか」
「別に、大丈夫だから……」
ハブネークが顔をそらす。
情けはいらない
そういう意なのだろうか。
「おい」
「じゃあな…」
「おい!待てって!!」
森の奥に去ろうとするハブネークの尻尾を、ガシッと掴んだ。
そのまま自分の方に引き寄せる。
「なっ……」
途端、首筋に慣れない感触が。
ビクリと体が跳ねる。
「っ貴様…!?」
「あっ…、わ、悪ぃ!!癖が……」
急いでザングースは舌を引っ込めた。
首筋を舐められた感触がまだ残っている。
変な所まで、敏感に反応していた。
「…こんな傷、すぐに治る。だから……」
「分かった。今日は…もう帰る。けど」
「明日、またここに来い。これからも、ずっと。毎日だ。約束できないなら、お前、どうなるか分かってるんだろうな」
彼らにとっては、一族の掟を破る約束だった。
蛇は命の為に、鼬は自分の、
恋の、為に。
約束を、破る事はできない。
「……分かった。約束だ」
「明日、な。また会おうぜ」
自分の気に入ったモノは全て自分の側に縛っておくのだ。
彼は、鋭い爪で茨を切り裂いた。
そしてまた、一族の群れに戻って行く---------------。
[END]
あとがき
毎回毎回オチが中途半端ですみません。
ザンハブが書きたかっただけです。