そのときだった。
「っ!!!」
ガブリアスは自分の目を疑った。
そう。
目前にある廊下の曲がり角にいたのだ。
声の正体が。
「……バンギラス。止まれ」
「は?」
「………おい」
その正体――ボウッと佇む暗い光のようなものに声をかけた。
その光はゆっくりとこちらを向く。
「っ!!? が、ガブリアス、あれ…!?」
「落ち着け」
「……何…?」
光は声を出した。
やはり。
先ほどずっと自分を惑わせていたあの声だ。
「お前は、俺に何か用があるのか?さっきから俺に纏わりついてきて」
「……………」
「どうなんだ」
ガブリアスは容赦無く問い詰める。
隣で怯えるバンギラスを肩に抱きながら、光の返事を待った。
光は、その場所から動かないまま言う。
「…私は、貴方達のお察しの通り、既にこの世の者ではありません」
「じゃあなんでここに残って俺を追ったりしたんだ。何か未練でもあるのか」
「……私には、恋人がいました。
それが、貴方のようなガブリアスだったのです」
突如に、光の体が眩しく光りだした。
あまりの眩しさに二匹とも腕で目を隠す。
その光が収まって、二匹は再び前を見た。
しかし、そこには。
「私は、…」
「サーナイトだったのか…」
光は先ほどのような形が無いものではなく、今はしかとポケモンの姿形をとっていた。
しかも、ポケモンの中でも高い美貌を兼ね備える
サーナイト。
「私の恋人は、今もどこかで生きています。しかし私は先に逝く事になってしまった」
「………」
「私はあの人にもう一度会いたかった。どんな形であっても。死んでしまった後もずっと愛していた、いえ、愛しているあの人と」
胸に両手を当て、サーナイトは涙声で言い終えた。
ガブリアスは話を聞き終えると、バンギラスから離れてサーナイトの側へ歩み寄る。
後ろでバンギラスが制止の言葉を叫んでいるが気にしなかった。
「そのガブリアスに会えないと成仏できないか?」
「……」
黙りながらもサーナイトは首を縦に振る。
承知したように、ガブリアスはサーナイトに顔を近付けた。
「だったら、俺で我慢してくれないか」
そう言って
ガブリアスは静かに彼女の頬へ口付けた。
「―――――ぁあっっ!!!!?」
背後でバンギラスが酷く驚いた様子で声を上げる。
しかしその声は二匹には届いていなかった。
サーナイトは驚いた様子も無く、ニコリと笑う。
「……ありがとうございます。けど、私はもう少し、彼を探したいです。ごめんなさい」
「そうか」
少しだけ涙を零して、彼女は音も無く消えた。
フッと辺りは静寂に包まれる。
「……じゃ、帰るぞ」
「はっ、待て!!!な、お、お前、あれ…!!!」
「なんだ。キス如きで。俺は経験者だからあんくらいのキス、数の内に入らん。しかも相手は幽霊。これから恋愛するワケでもなし」
「こっ……この女の敵…!!」
「お前は女じゃないだろう」
バンギラスが何故か顔を真っ赤にさせてぎゃーすか言うが、ガブリアスはそれを背後に聞いてさっさとそこを去っていった。
後から慌ててバンギラスがついてくる。
「それに俺は、ちゃんとした本命がいる」
「あ!?だ、誰だよ!!」
ガブリアスはニヤリと笑ってバンギラスの顔を見た。
そしてわしゃ、と頭を撫でてやる。
「さあな」
―――たったさっき、できた本命だけど、な。
[END]
あとがき
話の構成がメチャクチャすぐる。
早く終わらせたかったんです~´д`;
ガブリアスが軽すぎるのは何故だ。多分これからヘタレに昇格していきます(昇格?)
♀ポケをサーナイトに選んだのはなんとなく……
ではなく一番綺麗なポケモンだと思ったからですね。