時空の神々の想い

 

「…ろ。おい、起きろ」
「……あと5分…」


「起きろと言っておるのだッ!!!このたわけ!!!!」


鼓膜が破れると思った程の大声で、空間の神、パルキアは朝を迎えた。
パルキアは体を起こすと、これまた大声でその相手に叫ぶ。

「っるせぇな!!!誰のウチだと思ってんだ!!!!」
「少なくとも、お前の家ではない」

時空の神、ディアルガは半ばため息に似た息をつき言った。

場所は゛やりのはしら゛。
彼の家ではなく、シンオウ地方、テンガン山の頂だ。

「仕方無ぇだろ。家が無いんだからよ」
「だからってここで寝る必要は無い」

パルキアは、何か事が無い限り大抵ここで睡眠をとる。


-----その内誰かに捕獲されるとは、思わないのだろうか。

「大体、」

面倒臭そうに立ち上がり、パルキアはディアルガに向き直る。

「お前は…」
「なんだ。何か、文句でもあるのか」

「文句だ。お前は、なんでいつもオレを起こしに来るんだよ。自分で起きられるって、いつも言ってるだろ?
お前はオレの女房かよ」

ディアルガの顔が、赤くなったのが分かった。
なんで赤くなるのか、と思っていると、突然腹へ激痛が走る。

そして、その痛みのあと、塔の柱へ吹っ飛ばされた。


「っ、な、何しやがる!!」

ディアルガの大技、゛ときのほうこう゛を受け、吹っ飛ばされたのにも関わらず、パルキアは数秒でその場を立ち上がった。
また攻撃が来るかと、パルキアは゛あくうせつだん゛の準備をする。

「何しやがる、ではないだろうっ!!!誰が、誰が、きっ、貴様の、女房に…」
「あ?聞こえねぇぞ。もっとデカイ声で……」

「っ゛ときのほうこう゛!!!!」


油断して手を緩めれば、途端また腹に咆哮が炸裂した。

今度は死ぬ思いで足を踏ん張ったので、柱にぶつかる事は無い。


「つぅっ…!テ、テメェ…」
「ぐっ…」

「゛あくうせつだん゛!!!」

ディアルガが技の反動で動けない内に、パルキアが攻撃を仕掛ける。
見事、その攻撃はディアルガの顔面に直撃した。

「様ァ見やがれ!!」
「っ貴様ぁ…!!タダで済むと思うなよ!!!喰らえ、゛ラスターカノン゛ッ!!!」

半分涙目になりながら、ディアルガが゛ラスターカノン゛の準備をする。
゛ラスターカノン゛を溜めるのには時間がかかるはずだ。

そのわずかな時間を利用して、パルキアはディアルガに一気に間合いを詰めた。


構わず攻撃をしようとしてくるディアルガに、パルキアは最終手段に出る。

 

ドサッ……


やりのはしらに、やっとのことで静寂が訪れた。

しかし、その光景は。

「…っ!?」
「どうだ。攻撃するにできないだろ、この距離じゃ」

パルキアの最終手段。

だが、これではただ相手を押し倒すでけであって…
パルキアは事の重大さを分かっていない。

「ばっ、馬鹿!!そこをどけ!誰か来たら…ッ」

「じゃあ今すぐ攻撃をやめて帰る事だな。でなきゃここでお前にキスしてやらぁ。♂のオレにされるのなんて、プライドの高いお前にとっちゃあ屈辱だよな」

普通だったら、ディアルガはここで゛ドラゴンクロー゛でもお見舞いして、ちゃっちゃか帰るだろう。
「誰が貴様なぞに口付けされるか」
とかなんとか言って。


しかし、普通じゃないのだ、今回は。


「ふ、ふ、ふざけるな…」
「まぁオレはいいけどな。お前とキスしたって数の内に入らねぇし」


この言葉を聞いた途端、ディアルガは既に行動に出ていた。

パルキアに、゛ドラゴンクロー゛。

「痛えぇっ!!!テメェ…!」

パルキアの言葉が止まる。

ディアルガの目から、わずかに雫が零れたのを、彼は見逃さなかった。


時の神と言われ、いつも他人を見下していた、ディアルガが

泣いていた。


「ばっ…、な、なんだよ。いきなり泣くなって」

自然とパルキアの口調も和らいでいる。
ディアルガの口がやっと開く。
しかし、零れる雫は後を絶たない。

「私が…嫌いなのか……」
「は…?」
「答えろっ!」

ディアルガが、怒鳴るように言う。
パルキアは困惑しながら、その場を立ち上がった。

「べ、別に嫌いじゃねぇけど…」
「…じゃあ、…私に口付けしてみろ。できるか?」

目茶苦茶を言うな。

そう思ったが、ここでキスもできなかったらただのヘタレになってしまう。
しかし仮にも相手は♂。

パルキアの中で常識とプライドが戦った。

「パルキア」
「ディ、ディアルガ、落ち着いて考えろ。オレとお前は仮にも♂同士であって…」

名前を呼ばれただけでも心臓が高鳴り、パルキアは後退りする。
オレはホモじゃない、ホモじゃないと自分に言い聞かせた。

そうだ。ホモじゃないなら♂とキスしようが関係無いじゃないか。
別にキスしようがそれは数の内に入らないのだから。

「く、くそ…。だったら、目ぇ瞑りやがれ!!」

半ばやけくそ状態になりながら、パルキアはディアルガの顔を引き寄せる。
ディアルガは、特に何も言わず目を瞑った。

「…く……」

ここまで行ったはいいが、何故かまるで体が動かない。

そもそもなんでこいつはオレにキスをねだるのか。
そして何故こうなってしまっているのか。


「ディ、ディアルガ…。やっぱりこういう事は勢いでやっちゃ…」
「…ヘタレ」
「……はぁっ!!?」

ボソッと小声で言われ、パルキアの血管がブチッとキレる。
思わず腕を振り上げたが、ここは相手を殴るところではないだろう。

腹が立つのを抑え、パルキアはデイアルガに言う。

「テメェはいい加減にしろよ!!なんでこんな事するんだよ?」
「………から」
「聞こえねぇッ」

 


「2度も言わせるな!!お前の事が、好きだからに決まっているだろう!!!」

 


しん、と沈黙が訪れた。

ディアルガ自身も、しまったという顔をしている。
その顔が、段々と赤く染まっていくのが手に取るように分かった。

パルキアも、どう返事していいのか分からず、沈黙は両者どちらも破る事はできなかった。

「……ばっ、馬鹿、勘違いするなよ。誰が貴様の事が好きだと…」

言い訳になっていない言い訳は、また重い沈黙を続けるだけだ。
ディアルガの顔も赤くなる一方で、先程の言葉が偽りだとはまるで思えなかった。

「…す、すまなかった。私は、そろそろ帰る事にしよう。…明日から、自分で起きてくれ」
「お、おい…」

ディアルガは、パルキアに背を向けると、急ぐようにやりのはしらを出て行った。
パルキアは、ただその背中を見送る事しかできずにいた。

 


----お前の事が、好きだからに決まっているだろう!!!----


あの言葉と、赤く染まっていったディアルガの顔が、脳裏に焼け付いて離れない。
これから、あいつと会えばどうすればいいのか。

明日の起床より、遥かに大きな問題ができてしまった。


[END]

 

モドル