君と出会った、その日から。

 

時計の針はもう深夜12時を回っている。
てんくうポケモン、レックウザは、人気の無いこの時間を使ってシンオウの上空を散歩していた。

季節は冬。
夜空に浮かぶ星は、美しく輝いている。

「…ふん、気に入らん。ここは寒々しいだけだ。とっとと帰るか」

自ら勝手に来たのにも関わらず、この地に文句を吐くレックウザ。
彼はホウエンへの方角へUターンして早くも帰ろうとした。

--------が、地上にあるモノを見つけ、その長い体は速度を緩める。

「見慣れぬポケモンだな…」

ここからでも分かる、黄金の輝き。
帰りたいと思っていた気持ちが嘘のように消え失せ、吸い寄せられるように、彼は地上へ降り始めた。

近付くにつれ、そのポケモンの容姿がはっきり見えてくる。
黄金の装飾品のような物を首につけ、灰色のような体に6本足の竜。

何故だか分からない。
妙に心臓が高鳴っていた。

「…見慣れぬ奴だ。シンオウの者か?」

彼はその竜に話しかける。
それがよそ者がたたく口か、と自分でも思ったが、別に言い直すつもりは無い。
黄金の竜は驚いてこちらを振り返った。

しかし竜の対応の仕方は至って冷静だった。

「誰だお主は」
「我はレックウザ。ホウエンの竜だ。心配するな、貴様に害を加えたりはせん」
「…私は、ギラティナだ」

ギラティナという名の竜は、用が無いならとっとと帰れ、という様子だ。
しかし帰る気はさらさら無い。
レックウザはギラティナの隣に座ると、勝手に喋りだした。

「ここはなんと言う地だ?」
「゛おくりのいずみ゛。霊魂を、あの世へ送る場所だ」
「…貴様が霊魂を送るのか」
「あぁ。…みんな、気味悪がるがな。お前もそう思うだろう?」

そう問うギラティナの顔が、とても寂しそうだった。
きっとこの仕事を好きでやっているのだろう。

他人なのに、彼がとても気の毒になった。

「私はこの仕事に誇りを持っている。なのに…」
「我は、気味が悪いとは思わない。むしろ、貴様が立派だと思う」
「…!!な、何故…」

「周りから何を言われても、この仕事を続けている貴様の方が、よほど立派だ」

ギラティナの顔がパッと明るくなる。

----その次の瞬間、何を思ったのだろう。何が起こったのだろう。

「私のこの仕事を認めてくれたのは、レックウザ、お主が初めてだ。ありがとう」

背後に薔薇が咲き乱れるごとく、ギラティナが笑顔を見せた。

瞬間、レックウザは体中が熱くなる。
触れなくても、顔が真っ赤なのが自分でもよく分かった。

そのとき思ったのは、分かっている範囲でただ一つ。


とてつもなく、彼の笑顔が可愛かった。


「ふっ、ふん!!我はただ思った事を言ったまでだ。別に礼を言われる事はしていない」
「それでも嬉しかった」

また、笑った。

その少し無邪気な笑顔を見る度、レックウザは心臓が高鳴る。
二人きりでいるの事にさえも緊張し始めて、レックウザはその場を立ち上がった。

「もう直夜が明ける。そろそろ帰らなくては」
「そうだな…。あと、レックウザ」
「なんだ?」
「また、来てくれるか?」

答えは決まっている。


「ああ。またな、ギラティナ」

そう言って、エメラルドの竜は空高く飛び上がった。

 


彼らは自覚していないけれど。
出会ったその日から、


その竜に恋していた。

[END]
 

モドル