太陽の光

 

彼は、空が機嫌よく晴れている日には大体寝て過ごしていた。
昼寝が好きらしく、木陰で眠っているのをよく見かける。

----この季節以外は。


「今日も雨ね…」

仲間のレントラーが窓から外を見てつぶやいた。
季節は梅雨。
しとしとと雨が降り、室内は湿気が立ち込めている。

「…梅雨なんて嫌いだ」
「ドダイトス、そんなしけた顔するなって。雨でもやる事はあるだろ」

ムクホークがドダイトスをなだめるが、ぷいっとそっぽを向かれた。
部屋の隅で不機嫌そうに文句を言うドダイトスは、この季節中子供のようにすねっぱなしだ。
よほど晴れが好きなのか。

「昼寝なら部屋の中でもできるじゃない」
「…俺は、昼寝じゃなくて太陽が好きなんだ。こんな雨ばかり降っている季節、必要ない。一切ない」
「太陽?」

 

ドダイトスとは長いが、そんな事は初めて聞いた。
ムクホークはドダイトスの近くまで来て、またそこから窓を見詰める。
そしてこう言った。

「オレは梅雨、好きだ」
「ハァ?」

レントラーが外を見るのに飽きて部屋を出て行くのを確認し、ムクホークは言葉を続ける。

「好きなものは好きなんだよ」
「悪趣味だな」

「雨の日は、ドダイトスが隣にいてくれるからな」

その言葉に驚いて、ドダイトスはムクホークに振り返った。
しかしすぐに目を細め反論する。

「誰がお前の隣にいるか」
「お前晴れの日は、いつも一匹で昼寝してるからな。雨の日はどうだ?思い出してみろよ。オレといただろ」

確かにそうかもしれない、とドダイトスは一瞬勢いがしぼんだ。
しかしこれごときで引くドダイトスではない。

「別に俺が一緒にいた訳じゃない。お前から一緒にいただけだ」
「素直じゃねぇな…。ま、そういう所も可愛いけど」

ドダイトスの顔が、カッと赤くなるのが分かった。
照れているのか、単に怒っているのかは分からないが。

ムクホークはドダイトスの顎を自身の羽で掴み、引き寄せた。
その顔の赤みはどんどんヒートアップするが、構わない。
゛いわなだれ゛で攻撃されようがどうでもいい。

「オレにとってお前は太陽の光だ」
「何を…ッ」

「゛無くてはならない存在゛なんだよ。だからドダイトスが側にいてくれる雨が好きだ」
「馬鹿な事を抜かすなっ!!」

「愛してる」

ムクホークは、自分の口ばしをドダイトスの唇へ触れさせようとした。

------しただけであって。

 

「ふざけるのもいい加減にしろおぉぉぉっ!!!!」


部屋の上から突然大量の岩が崩れ落ちる。
゛いわなだれ゛だ。
油断していたムクホークは一気にその岩に押し潰された。

「っ思い知ったか!!!」
「な、何すんだドダイトス…」

早くも岩の下から這い出てくるムクホーク。
本当にしつこいと思った。

「たく、荒いぜお前は」
「分かったら二度とこんなふざけた事はするな!!」
「ファーストキスもまだなのか?」

少し馬鹿にした様子でムクホークは言う。
図星だったのか、途端ドダイトスの顔が赤く染まった。

「…ッお前だってまだのくせに…」
「どうかな」

うつむいていたドダイトスの顔がバッと上がる。
聞き逃せなかった。

「おまっ…、他の奴としたのか!?誰だ!!!」
「嘘だ、嘘。誰ともしてねぇって。ファーストキスはお前の為にちゃんととってある」

ムクホークがそう言って、何故か安心する。
別にムクホークが誰と何をしようが関係は無いのに。


顔を上げ、窓を見れば外はすっかり晴れて、日光も降り注いでいた。
先ほどまでの雨が嘘のようだ。

「…外に出ないか」
「ああ。すっかり晴れてるしな。昼寝でもすっか」

「その…ム、ムクホーク。お前は…、俺にとって太陽だ…」

「なんか言ったか?」
「っ別に、なんでもない!!」


言ったら、なんだか調子が狂ってしまう。
聞こえないなら聞こえないでいい。


------お前は、無くてはならない、愛しい存在の太陽。

[END]
 

 

モドル