「……ス。マルス」
トーンの低い、でも耳に心地よい声で、僕は重い瞼を開けた。
「…スネーク?……痛っ!!」
「動くな」
腕に痛みが走り、思わず声を上げれば、スネークに動く事を制される。
――そうだ。
僕は確か、敵にやられて……。
腕を見れば、既に治療が施されていた。
血が少し滲んでいる。
「これ…」
「あぁ…俺がやった。マントを借りたからな」
…は?
バッと腕を見れば、その治療に使われている布は白色ではない事に気付いた。
蒼………
後ろのマントを振り返れば、マントの4分の1が破られていた。
ま、まさか、まさかじゃなくても……
「な、何やってんの君はぁぁ!!これは僕がアリティアで特別に作ってもらった大切なマントなんだよ、分かってんの!!?」
「包帯の代わりになる物が他に無かったんだ。仕方ないだろ。それにそうでもしないと、血は止まらないし」
「だからって……」
反論を尚も続けようとした僕を無視して、スネークは僕から離れていった。
…ここは洞窟らしい。
スネークは洞窟の出口に立ち、煙草を吸う。
外は雨が降っていた。
ザァザァと立つ雨音がうっとおしい。
「じっとしていないと傷口が開く。帰ってから響くぞ」
「…っ分かったよ」
「そうやって素直にしてればいい」
スネークがこちらを見て少し微笑んだ。
っどきぃ!!!
ち、ちょっと冗談じゃない。
僕が、アリティア王子のこの僕が、30超えたおっさんの笑顔を見てなんで『可愛い』なんて思わなきゃいけないんだっ。
「…煙い…」
「あぁ、すまないな。王子さんには慣れないか。そもそもまだ未成年だし」
そう言ってスネークはニッと笑う。
なんか少し馬鹿にされたように気分になった。
僕をなんだと思ってるんだ。
「…早く帰らんとなぁ…。あの針鼠に叱られる」
「…ソニックの事?」
「そうだ。……後でうるさいからな…。構ってやらんと」
また笑う。
そんな事を言うスネークの顔を見て分かった。
…その青い針鼠が、好きなんだなと。
「…ふぅーん」
「なんだ。いきなり仏頂面して」
「僕はいつでも美形だよ」
「ははっ」
冗談混じりで言えば、スネークは吸い終えた煙草を地面に擦り付けながらまた笑った。
―――この人こんなに笑うんだ。
雨は止まない。
よって帰る事もできない。
「…ヤバいなこりゃ。針鼠に夕飯までは帰るって言ったからなぁ…。今6時だろ?間に合わないな」
「馬鹿だなぁ。念の為に帰るのは夜って言っとけば良かったのに。僕はアイクに深夜に帰るって言ったけど」
「馬鹿は余計だ」
スネークがムッとしたように唇を尖らせ、二本目の煙草に火を点けた。
洞窟内にまた、独特な煙草の臭いが漂う。
「……僕も吸いたいなぁー」
「は?煙草をか?」
「うん」
「なんたって王子が煙草を…。体に悪いぞ。未成年だろ」
「王子だって普通の人間だもの。ほら、早くこっちに来て」
ったく、と仕方なさげにスネークが僕の方へ歩み寄ってきた。
…甘いなぁ。伝説の傭兵のくせして。
スネークは僕の所まで来て、煙草を一本手に取る。
そしてしゃがんでから煙草を僕の前に突き出した。
「ほら」
「どうやって点けるの?」
「面倒だな…ほら、ライターでここに点けるんだよ」
スネークが前から僕に覆いかぶさるようにして指導する。
そのときの、低くて心地よい声と、ふんわりとした彼の匂いが僕の理性を壊したのだろう。
「……っ!!?」
僕はスネークの手首を掴んで、ぐいっと引き寄せる。
僕の胸に倒れたスネークの顎を取った。
「なっ……マルスッ!?」
「こっちの方が早い」
そう言って、僕は彼の唇を奪う。
口の中に煙草の味がいっぱいに広がった。
――苦い。
「っぷは……」
「やっぱ苦いね」
「当たり前だ!!おい、どういうつもりなんだ!!?あんたにこんな事される覚えは……」
「無いなんて言わせないよ。『なんたって王子』だもんね、僕は」
にっこりと黒い笑みを浮かべて、
王子はその彼をおいしく頂いた。
[END]
あとがき
…なんでウチのマルスこんなんになっちゃったんだろう。
そして毎回オチがやる気無さ過ぎる。
もう終わりかぁ、とか思うとさっさと終わらせたくなるんだよ。