今日はある人に呼ばれて、お茶をする事になった。
紅茶とかは好きだから、その点は招待されて嬉しい。
けど…
「ピット君?そこにいるのだろ?はやく入っておいで」
扉の前で立ち尽くしていると、その向こうから声がした。
ここはマルスとアイクの自室だ。
しかし今日、アイクは乱闘が立て続きであるので部屋にはいない。
一方マルスは、夜に乱闘が一度あるだけという事で、今日一日暇だという。
だからって、何故ボクがマルスさんとお茶を…
天使の容姿をした少年、ピットは肩をガクと落とした。
「…お邪魔します…」
沈んだ気持ちで、ピットは目の前の扉を開く。
中は他の部屋と広さは同じだが、何故かカーテンで2つに仕切られていた。
しかし分け方が明らかにおかしい。
マルスの物と思わしききらびやかなベッドがある方は、部屋の四分の三を占めているが、もう一方の方は部屋の四分の一ほどしかスペースが無い。
恐らくこちらがアイクのベッドと武器用の棚のスペースだろう。
----アイクは不満を覚えないのだろうか。
「ピット君。早くおいで」
「あ、はい…」
カーテンの陰から手で招かれ、そちらへ歩いて行く。
そこには丸いテーブルと二脚の椅子、その椅子に座るマルスの姿があった。
「座って」
指示をされ、ピットは大人しく椅子に座る。
テーブルには、ミルクティーが水面を揺らしてカップに入っていた。
ピットが恐る恐る口を 開く。
「あの…」
「今日は、話があるんだ」
マルスがティーを飲みながら言った。
さすが王子だけあって、ティーを飲む仕草も優雅だ。
「話?」
「そう…。とても重大な事だ」
「それって…」
ゴクリ、と息を飲む。
「教えてくれ。どうやったら新人でそこまで人気を上げられるんだ?」
「…は、はぁ?」
あまりにもその話の内容が下らなさ過ぎて、ピットは間抜けな声を出す。
しかしマルスの表情は真剣だ。
「に、人気って…」
「君が来るまでは、いつも人気投票は僕が一位だった。けど、スマブラXになってから下がってしまったんだ!!君が一位を僕から奪ったから!!!」
机をバンッと叩き叫ぶマルスを前に、ピットは思わず後退りした。
マルスは順位にはこだわる方だが、ここまで執念深かっただろうか。
いや、゛人気゛という名の人からの観点にこだわっているのだ。マルスは。
「そ、そんな事ボクに言われたって」
「まぁ君は最初から顔だけはいいからね。顔だけ」
さすがのピットも、この一言には黙っていられなかった。
勝手にお茶を誘って、来なきゃ乱闘で痛い目にあわせるって脅して、無理な質問に答えろって言って、それで無理って言えば文句言って…
ピットは怒りのあまり椅子から立ち上がり、マルスに怒鳴った。
「あんたはさっきからうるさいよ!!無理だって言ってるじゃないかっ!!ボクの人気が上がったのだってボク自身のせいじゃないし、あんたの人気が下がったのだって、あんたのそのひねくれた性格のせい……」
ドゴシャァァァァァンッ!!!!
風が頬をかすめ、突然轟音が部屋に響く。
何事かと思い目の前を見れば、マルスが細身の剣、ファルシオンを両手に持ち、前かがみになって立っていた。
ファルシオンはティーカップの乗っていたテーブルを真っ二つにし、更に床までひびを入れている。
しかしファルシオン自体は、細いのにも関わらず全くの無傷で、折れている様子も無かった。
---その剣で何故ここまで破壊できる。
「…ピット君。確かに僕も言い過ぎた、かもしれない。けど、君の言った事もどうかと思うよ。反省してくれ」
「は、はい…っ」
もうここは肯定するしかなかった。
しなければ命までが危うい。
マルスは剣を鞘に収めると、ピットにもう出ていいよ、と言い、テーブルの残骸を片付け始めた。
結局もういいのか…、と、マルスにしては諦めが早いと思ったが、解放されるのはありがたい事だ。
ピットは失礼しましたと言い残し、部屋を出た。
しかしマルスが自分で片付けをするなんて珍しい。
アイクが帰って来たら押し付けるのかと思っていた。
-----それがピットの最大の誤算だったのかもしれない。
次の日の乱闘、チーム乱闘では何故か2vs1のバトルだった。
マルス・アイクvsピットである。
不公平だ、とピットはもちろん反論したが、それはアイクにさえも聞いてもらえなかった。
マルスとアイクにボコボコにされたピットは、アイクに乱闘後事情を聞いた。
返ってきた答えは
「マルスが肉をくれたから、言う事を聞いてあんたを攻撃したんだ」
マルスが諦める訳がなかった。
----復讐だったのだ。
もう、本気で人気がどうでもよくなったピットだった。
[END]