ザシュ―――――
漆黒の中で、音が響いた。
腹が熱い。
そこに手をやれば、留めなく何かが溢れていた。
真っ赤な、血。
「っうおぉぉぉ!!!」
そんな事も無視して、オレは手にしていた槍を振り上げる。
懇親の力でそいつを前に居たものに突き刺した。
断末魔が森全体に響き、前に居た何かは倒れる。
魔物だ。
「はぁ…くそ……っ」
もう無理だ。
オレは痛みに耐え切れず、その場に膝をついた。
長い槍を杖代わりになんとか体を支える。
「か、カイス!!」
後ろで声を投げかけられた。
オレは痛む腹を押さえながら背後に振り返る。
「怪我…無ぇか?」
「無いよ!!そんな事より、何やってんの本当!!!あぁ、こんなに血が……っ!シェナ!!すぐに治療!!早く来て!!!」
目の前で慌てて仲間を呼ぶユーク族のアロールイン。
――無事で良かった。
こんな細い体にあんな武器で刺されたらひとたまりも無いだろう。
守れて、本当に良かった。
「…これで大丈夫だよ。ここでじっとしててね」
クラヴァットの少女、シェナにケアルと包帯で治療をしてもらい、なんとか血は止まった。
オレは木にもたれ掛かり、ありがとうと一言礼を言う。
「ちょっと、カイス」
「あん?」
「あん?じゃないわよぉ!!何やってんの馬鹿でしょ!?こんな怪我負ってさっ。どんだけ油断してたのよ!!」
油断―――
と言うより、何も考えないで飛び出していたのだ、オレは。
あいつに襲い掛かろうとしていた、魔物からの攻撃を防ぐ為。
セルキーのロ・ミンはオレに言いたいだけ言うとその場を去ろうとした。
しかし、足を止め、遠くに手を振る。
「どうしたんだよ」
「おーいアロールイン!!ここでこいつの様子見ててよー!!あたしお腹減ってさ、なんか食べてくるからっ」
じゃねっ、とロ・ミンはオレから離れてゆく。
待て、と言おうとしたが、口を開いて動いた瞬間腹に激痛が走った。
「ぅがっ!!」
「カイス!?」
必死に痛みに耐えるオレの顔を、アロールインがしゃがんで覗き込む。
いきなりのどアップにオレは思わず顔を赤く染めた。
「だ、大丈夫だよ。ちょっと動いて、傷が開いただけだ」
「…ごめん」
「は?」
「僕を魔物から守ろうとしてくれたんだろ?僕の不注意だよ。全部僕の責任だ……本当にごめん。僕がさっき、あの戦いで、もっと周りに気を付けていれば君はこんな目には合わなかった。
…本当に…ごめんなさい…」
アロールインが俯いて何度も謝る。
その声は、哀れみたい程の涙声で。
いつもオレをからかっておもちゃのように弄ぶ、あのアロールインとはとても思えない。
何度も謝罪をし、先ほどの出来事を反省する健気なアロールインを見て、オレの理性が吹っ飛びそうになる。
可愛すぎる……!!
「……アロールイン」
「え…」
そいつの手首を引っ張って、引き寄せた。
アロールインは呆気無くオレの胸の中に倒れる。
「なっ、なっ、カイス!!」
「っばか、自惚れんなよ、寒いだけだっっ」
今春だけど――
バレバレの誤魔化しをしてから、オレは『守り通したもの』を抱き締めた。
そいつの体温はぐんぐん上昇していく。
逆に暑いぞ、こりゃ。
「……っ…あーもう!!僕の事好きなんだろ、本当は!認めろよ!!」
「は、あぁ!!?ん・な・わ・け・無ぇだろ!!自惚れんなっ、つったたろうが!!」
絶対こいつの仮面の下の顔は真っ赤だ。
握っている手がメチャクチャ熱い。
まぁそう言うオレの顔も真っ赤だろうけど…、やましい事は一切考えてないからなっ
――けど
「…無事で良かった」
「……あ、…」
「ん?」
「っ…ありがとう」
そのときのそいつの言葉は
いつになっても忘れられない
[END]
あとがき
うっひゃあ甘ぇー(・∀・)
いつからユークツンデレになったの。
本当はヘタレ×誘い受けなんだよ
いやぁ物事はうまくいかないもんですね。