我慢ならなかったんです。

 


「…レオン?」


寝ていた。


オレの想い人。


殺人マシーンと恐れられている、冷酷な人。

 

そんな人が、

基地のソファに無防備な状態で、横になり寝ていた。

 

「レオーン。大丈夫?」
「………」

パンサーがレオンの顔を覗く。
すーすーと寝息を立てている所を見ると、狸寝入りでははないようだ。

にしても、どうしたのだろう。
いつもあんなに用心深い彼が、今自分の目の前で寝ている。
しかもリビングのソファで。
疲れてるのか……。

 


彼の、薄く開いた唇が、なんとも色っぽい。


「そっとしとくかなぁ…」


惜しい気もするが、自分とレオンは恋人同士ではない。
襲ったりできる立場ではないのだ。

パンサーは苦笑しながら立ち上がろうとした。

 

しかし。


「っ」

 

クイッと尻尾を掴まれて、パンサーは思わず転びそうになる。


……掴む?


「れ、レオン?」
「……………」
「あのー…」


彼の細い指が、自分の尻尾に絡んでいた。

尻尾はしっかりと握られているが、レオンの目は閉じたままだ。
寝ているのか、この状況で?


「どうしよ…」


立ったままの状態だったので、とりあえずしゃがむ。
尻尾を放してもらおうと、パンサーは掴んでいる彼の指に触れた。
指を掴み、そっと引き剥がそうとする。

 

 

「んっ……」
「っ!!!」


不意にレオンの口から漏れた甘い吐息に、ビクッと体が跳ねた。


な、なんだ、今のは。

 

「…れ、レオンさーん…?」
「……ぃく…な…」
「は?」


「ここにいろ………」

 

その思いも寄らない言葉に、パンサーは自身の体が総毛立つのを感じる。

本当に寝てるのか!!?
い、いや、寝ぼけているだけかもしれない……


そう慌てる裏で、やはり一つの感情が暴れていた。

 

可愛い…!!
今すぐ襲いたいっ……!!!

 


見れば、レオンの目は半分だけ開いてこちらを見ている。
完全に起きているわけではないので、その表情はとろんとしていた。

ヤバい…

 

「…いるよ。ちゃんと」

 

耳元で囁くように言う。

ピク、とレオンの体が揺れた。

 

「…レオン………」

 


我慢できずに、レオンの体を組み敷く。

 

そして、彼の唇に顔を近付けて

 

小さな音を立ててキスをした。

 

 

 

が、直後。

 

 

「っ、何をしている貴様ぁぁっっ!!!!!!」

「ぉぶっっ!!!!!」

 

顔面に激痛。


レオンの拳がとんできたのだ。


細い腕でも充分な破壊力を持ったそれに殴られたパンサーは、組み敷いていた状態から床に落ち、痛みで顔を押さえる。

 

「いったぁ……っ!!何すんのさ!?」
「なっ、何ではない!!それはこっちの台詞だ!!!」
「は……」


そこでやっと殴られた意味を理解する―――と言うより、思い出した。

そうか、キスしたからか。

 


「ははは……」
「笑うな!!」
「おわっ」


焦って笑うパンサーに殴りかかるレオンだが、パンサーはそれを体をずらして避けた。
前への勢いで、レオンはバランスを崩す。

なんとか床に座っていた、パンサーの体がクッションになって、レオンはパンサーに倒れこむ。

レオンは自然とパンサーの胸に体を預ける形となった。

 

「くっ、クソ!!なんなんだ貴様はっ」
「なんなんだって………、レオンが゛ここにいろ゛とか言ったんでしょ。だから我慢できなくてぇ…」
「はぁ!?私はそんな事一言も言ってないぞ!!!勝手な事を抜かすな!!それに、何故私が貴様に接吻されなければ…………」


「好きだから…だけど?」


自分の胸の中にいるレオンを、抱きしめた。
細いレオンは易々とパンサーに捕らえられる。

「なっ…」
「可愛い……」
「ふっ……ざけるな!!」


レオンの言葉も無視して、パンサーは抱き締める腕の力をまた少し強くした。
レオンの抵抗の力も弱まる。


「ウルフが…っ帰ってくるだろうがっ…!!」
「そんな事心配してるの?本当可愛いなぁ…」

 


ガチャ

 

「………………」


扉が開いた音。

振り返り、やはりそこにいたのは。

 

「だ、旦那…」
「ウルフっ…!?」


「あ、いやその…。テメェら、んな関係だったのか?その……俺ぁ別に構わねぇけど…その、なぁ。ここでいちゃつくのはやめろよ。じゃぁ…邪魔して悪かったな」


バタン、と、また扉は閉められた。


誤解された。
完全に。

パンサーにとっては都合のいい事だが、レオンにとっては冗談ではない話だろう。


「れ、レオン?」
「……いい物を持っているな…?貸せ…」

おもむろに、レオンはパンサーの腰にあった、小型マシンガンを取った。
ゾッと背筋が凍る。


「あ、いや、その………」


「死ねええぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!」

 

その後の基地には、銃声と、パンサーの悲鳴と、レオンの怒声、ときたま笑い声が響いた。

 


――――ウルフの誤解は、後日解けたと言う。

 

[END]

 

あとがき

れ、レオンが……
もっと冷静なはずなのに暴れさせすぎたよ
ていうかパンサーの一人称って゛オレ゛でいいんスかね?
間違ってたら誰か教えて下さいー

 

モドル